株式市場において、米国株、とりわけS&P500の強さというのは、多くの場面で語られています。そして、これまで高いリターンを出してきたことから、多くの投資家に指示されています。
そして、「S&P500が上がるのであれば、レバレッジを掛けて、より高いリターンを狙うべきだ」という声もよく聞かれます。そういった投資家に人気なのが、SPXLです。ここでは、SPXLの性質・リスク・投資する際の注意点について解説したいと思います。
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この記事は以下のような人におすすめです。
- S&P500の未来を引き続き信じている人
- より短期間でリターンを得たいけれど、リスクが怖いな…という人
- 他人より高いリターンを出したい人
SPXL (Direxion Daily S&P 500® Bull 3X Shares) とは?
SPXLは、S&P500の3倍ブル、つまり、米国の大型株の3倍の値動きをするETFになります。もう少し詳しく言うと、基準価額の日次の値動きの3倍に連動するように設計されています。(あくまで日次であることにご留意ください。)3倍の値動きをする以上、リスクもリターンも高くなるETFになります。
基本データ:SPXL
基本データは以下の通りです。SP500に連動するETFであるため、組入銘柄数は基本的に同じです。そして、レバレッジを効かせているため、PBR等の指標はありません。
特筆すべきはリターンの高さです。ここ5年の平均(5年総額ではありません。)は44%と、非常に高い指標となっています。5年前に100万円投資していれば、460万円になっていた、という代物です。レバレッジという性質上、純資産額はそこまで大きくありません。
項目 | SPXL | VOO |
---|---|---|
組入銘柄数 | 509 | 509 |
PBR | NA | 4.2 |
PER | NA | 29.5 |
ROE | NA | 20.2% |
成長率(5年平均) | 44.46% | 18.7% |
純資産額(10億ドル) | 2.2 | 205.6 |
セクター比率:SPXL
セクターごとの比率を見てみましょう。こちらはSPXLとほとんど変わりません。
セクター | SPXL | VOO |
---|---|---|
素材 | 2.69% | 2.70% |
一般消費財 | 12.45% | 12.40% |
生活必需品 | 6.15% | 6.10% |
金融 | 11.32% | 11.30% |
ヘルスケア | 13.00% | 13.00% |
資本財 | 9.87% | 8.90% |
情報技術 | 26.67% | 26.70% |
通信サービス | 10.93% | 10.90% |
公益 | 2.67% | 2.70% |
不動産 | 2.46% | 2.50% |
上位組入銘柄:VIG
上位組み入れ銘柄は以下の通りです。こちらもS&P500と同じような傾向になっています。数年前に比べると、ハイテクの割合が高くなっているのは、「さすが」と言えるでしょう。
組入銘柄 | 割合(%) |
---|---|
Apple | 5.76 |
Microsoft | 5.29 |
Amazon.com | 3.94 |
Facebook – Class A | 2.11 |
Alphabet Inc – Class A | 1.84 |
Alphabet Inc – Class C | 1.77 |
Tesla | 1.53 |
Berkshire Hathway – Class B | 1.45 |
JP Morgan Chase | 1.38 |
Johnson & Johnson | 1.29 |
長期チャート:SPXL
設定来(約12年)のチャートは以下の通りです。10年だと約25倍になっています。これがレバレッジの持つ力なのです。ちなみにYahoo Finance ではDが分配金の実績になります。近年は定期的に分配金を出していますが、過去2012年~2017年は分配金を出していないことに留意しましょう。
レバレッジETFの本質を理解する
さて、SPXLのリスクや注意点を語る前に、レバレッジETFとは何ぞや、という話を少ししたいと思います。
レバレッジ投資の本質は、リスクをとった順張り投資である
もう少し丁寧に解説します。
レバレッジ投資は先物で運用します。たとえば2倍レバレッジの場合を考えましょう。レバレッジETFの場合、現物100に対し、200の先物を持ちます。これが10%値上がりしたとすると、先物は20増えて、220になります。そして、純資産も20増えて、120になります。しかし、翌日も2倍のレバレッジを維持するために、さらに20先物を買い足して、先物を240にする必要があります。この時、「上がった資産を翌日さらに買い増す」という、順張り行為をしている形になります。
一方で、仮に10%下がったときは、先物は180になります。そして、純資産は20減って、80になります。そのため、先物を20処分する形になります。「下がったときは損きり」という、これもまた順張り行為をしているのです。ニッセイ基礎研究所にある表が非常にわかりやすいので、詳しくはこちらをご確認ください。
レバレッジETFの持つリスクとは?
リターンの強さばかりが語られるレバレッジETFですが、そのリスクについても意識することが重要です。どういったリスクがあるか、きちんと把握しておきましょう。
指数との乖離
まず1つは、指数との乖離になります。基本的に、レバレッジETFは日次の指数の動きに連動します。極端な話、日次で10%の値動きがあったとすると、レバレッジETFは30%の値動きをします。
下の図のように、Day1こそレバレッジは通常の3倍となっていますが、Day2、Day3は、通常レバレッジの3倍、とはなっていません。これはレバレッジETFの性質によるもので、我々が受け入れざるを得ないリスクになります。
変化率 | 通常 | レバレッジ | |
---|---|---|---|
Day1 | +10% | 110.0 | 130.0 |
Day2 | -10% | 99.0 | 91.0 |
Day3 | +10% | 108.9 | 118.3 |
ただ、ずっとプラスが続く場合には、下記の図のように、レバレッジは強大な威力を発揮します。ここ数年のSPXLの動きの良さは、プラスが連続して続いた恩恵を受けている形になります。
変化率 | 通常 | レバレッジ | |
---|---|---|---|
Day1 | 10% | 110.0 | 130.0 |
Day2 | 10% | 121.0 | 169.0 |
Day3 | 10% | 133.1 | 219.7 |
減価リスク
上記の表が示しているように、プラスの時はいいんですが、マイナスが続くと、SPXLのパフォーマンスはVOOを下回ります。そして、プラスとマイナスが交互にやってくるようなシーンでも、SPXLは苦戦する傾向にあります。
上記の表のDay2で、通常ETFのリターンが99になっていることに着目ください。10%上がって10%下がったとき、ETFの数字は元の数字に戻るのではなく、マイナスになります。(※100×1.1×0.9=99になるので)。レバレッジはこの事象にレバレッジがかかるので、Day2の次点で、91%とマイナスが大きくなるのです。(※100×1.3×0.7=91)このリスクも念頭においておく必要があります。
リスク拡大によるリターン低下の可能性
もう1つは、リスクが拡大することによる、リターンの低下です。米モーニングスターが標準偏差を出しているので見てみましょう。Index(SP500)が18.52に対し、SPXLは58.88と、3倍以上のリスクになっています。
リスク自体は振れ幅であり、マイナス方向にもプラス方向にも触れる確率が高くなります。一方で、リスクが増えると、リターンの中央値は下がります。この5年は、SPXLにとって特に幸運な5年間であったことを、やはり年頭におく必要があるように思えます。
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最大ドローダウンの心理的負荷
最後に注目しておきたいのが、最大ドローダウンです。もう1度長期チャートを見てみましょう。
コロナショックの時を見てください。大幅な下落になっています。実際、この時は、70ドルだった株価が、19ドルまで下がっている、つまり、70%超の下落をしているわけです。ここに耐えることができるか、というのが非常に重要なポイントです。
投資家はそんなに強くありません。SPXLをガチホするのであれば、これくらいの下落は今後も起こりうる、ということを念頭に置く必要があります。個人的には50%超の下落は精神的負担がかなり大きいので、そういった下落を起こさないようなPFを組むことをお勧めしています。
SPXLに投資する際は、リスクに留意してPFを組むべき
SPXLは、そのリターンの高さに注目が集まっており、確かに大きい果実を得ることができるETFです。一方で、その分大きなリスクを抱えていることを忘れてはいけません。
リスクは時間分散することで管理できるので、むしろ超長期の人におススメのETFです。私たちは超長期投資(30年単位)を実践しようとしており、そのためSPXLへの投資は魅力的だと考えています。一方で、最大ドローダウンを抑えるために、より安定的なETFである、BNDとの併用を考えています。
投資する際は、ぜひ自身のリスク許容度を正しく見積もり、リスク管理しながら投資することを推奨します。
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