資産を形成するうえで、キャピタルゲインか、インカムゲインか、という議論は、終わることのないネバーエンディングストーリーのようであります。コジコジ夫婦は、資産形成期であるならば、配当を狙うのではなく、キャピタルゲインで益を狙うことをおすすめしています。これは単純に複利効果によるものです。
>>>なぜ配当狙いがダメなのか、という話はこちら
とはいえ、すべての高配当銘柄がダメかと言えば、そうではありません。あくまで同じリターンであれば、キャピタルゲインの方が良いのであって、配当10%と値上がり1%であれば、我々は間違いなく配当10%を目指すべきなのです。
ここでは、配当にフォーカスしたETFであるにも関わらず、将来高いリターンをもたらしてくれそうなETFである、VIGについて解説したいと思います。
この記事は以下のような人におすすめです。
- 増配株と高配当株の違いを知りたい方
- SP500のETFを買って、その次に投資するものを探している方
- より安定的に株式のリターンを上げたい方
VIG(Vanguard Dividend Appreciation) とは?
VIGとは、増配株、つまり配当が成長している株式に投資することができるETFになります。NASDAQ US Dividend Achievers Select Indexという指数に連動するETFになります。基本的には米国の大型株に投資をしているETFで、セクターの偏りがなく、グロースおよびバリューにバランスよく投資ができているETFです。
基本データ:VIG
基本データは以下の通りです。比較対象として、SP500に連動するETFであるVOOを置いておきます。ここ5年では、VOOの成長率が高くなっています。若干ですがVIGのほうがValue、ということですね。
項目 | VIG | VOO |
---|---|---|
組入銘柄数 | 247 | 509 |
PBR | 4.9 | 4.2 |
PER | 27.6 | 29.5 |
ROE | 22.3% | 20.2% |
成長率(5年平均) | 11.4% | 18.7% |
純資産額(10億ドル) | 55.8 | 205.6 |
セクター比率:VIG
セクターごとの比率を見てみましょう。
セクター | VIG | VOO |
---|---|---|
素材 | 3.00% | 2.70% |
一般消費財 | 16.60% | 12.40% |
生活必需品 | 10.30% | 6.10% |
金融 | 13.90% | 11.30% |
ヘルスケア | 15.40% | 13.00% |
資本財 | 21.80% | 8.90% |
情報技術 | 13.00% | 26.70% |
通信サービス | 2.20% | 10.90% |
公益 | 3.80% | 2.70% |
不動産 | 0.00% | 2.50% |
分散と言う観点で見たときには、セクターごとの分散は十分に効いているように思えます。SP500に比べて情報技術、通信サービスの割合が低く、一方で資本財や生活必需品セクターの割合が高くなっています。VIGは、ややオールドエコノミー寄りのETFである、ということになります。
上位組入銘柄:VIG
上位組み入れ銘柄は以下の通りです。先ほどのセクターの傾向が出ており、いわゆるオールドエコノミーが中心の銘柄です。
名称 | 数量 | 値 | ファンドの割合 |
---|---|---|---|
JPM:USJPモルガン・チェース・アンド・カンパニー | 14.29 百万 | 2.18 十億 | 3.92 |
JNJ:USジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J) | 13.04 百万 | 2.14 十億 | 3.86 |
MSFT:USマイクロソフト | 9.05 百万 | 2.13 十億 | 3.84 |
WMT:USウォルマート | 14.04 百万 | 1.91 十億 | 3.43 |
UNH:USユナイテッドヘルス・グループ | 4.71 百万 | 1.75 十億 | 3.15 |
V:USビザ | 8.05 百万 | 1.70 十億 | 3.07 |
PG:USプロクター・アンド・ギャンブル(P&G) | 12.22 百万 | 1.66 十億 | 2.98 |
HD:USホーム・デポ | 5.34 百万 | 1.63 十億 | 2.94 |
CMCSA:USコムキャスト | 22.68 百万 | 1.23 十億 | 2.21 |
KO:USコカ・コーラ | 21.38 百万 | 1.13 十億 | 2.03 |
結構VIGは入れ替わり(というか構成比の変更)が大きく、つい最近まではMicrosoftが構成比1位でした。
VIGの明確な特徴は、「無配当の企業は含まれない」ということです。たとえばAmazonやTesla、Googleなんかは現時点で無敗です。こういった企業は含まれていません。
さらには、増配株に絞っているという点です。基本的には10年程度増配している銘柄が入っています。なのでXOMとかは除外になっているのですね…
分配金・分配金利回りの推移
直近10年の分配金および利回りの状況です。株価は約3倍、分配金もだいたい2倍になっています。株価の平均成長率が13.5%に対し、分配金の成長率は7.8%と、株価の成長が上回っているのが特徴だと言えるでしょう。
2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | |
分配金 | 1.172 | 1.41 | 1.388 | 1.585 | 1.819 | 1.826 | 1.919 | 2.038 | 2.134 | 2.297 |
株価 | 44.90 | 50.02 | 64.65 | 71.15 | 69.74 | 78.04 | 95.50 | 93.48 | 121.27 | 140.00 |
分配金利回り(%) | 2.61 | 2.82 | 2.15 | 2.23 | 2.61 | 2.34 | 2.01 | 2.18 | 1.76 | 1.64 |
VIGがオススメの理由とは?
では、なぜ、VIGがオススメなのでしょうか。単に、「配当をきちんと増やすから」では説明になっていないので、少し過去のデータ等から、おすすめする理由を紹介しましょう。
配当成長銘柄が持つ強さ
最も大きな理由が、配当成長銘柄そのものの強さです。配当金は純利益の一部を株主に還元するものです。そして、多くの企業では、配当は利益の〇〇%までといった形で、大まかですがルールが決められています。
そういった中で、配当を成長させている銘柄というのは、配当の原資たる純利益、つまりはEPSを成長させ続けている会社になります。そういう意味で、VIG=成長力が高い企業の集合体、と考えることができるのではないか、という形で考えています。
実際、株式投資の未来を書いたジェレミー・シーゲル氏も、過去米国が長期間にわたり、配当利回りが高い銘柄は、高いリターンを出してきたことを本著で示しています。
さらには、標準偏差とベータが、配当利回りが高い銘柄のほうが低い、という傾向を述べています。つまり、1957年から2012年においては、SP500のうち、配当利回りが高い銘柄のほうが、リスクが小さくリターンが高い、という傾向が出ていたのです。
近年に限って言えば、GoogleやAmazonなどの無配大型成長株が出てき、一方で石油株等の脆弱性が浮き彫りになっているため、この傾向が変わっている可能性はあります。しかし、理論的には、やはり増配株というのは、「それなりに」強い会社が多く、したがって、それなりに強い会社であるVIGを持つことは、今後のEPS成長という観点でも、合理的ではないかと思うのです。
金利上昇局面、下落局面でも、比較的安定したリターンが得られる
もう1つは、金利と利回りの関係です。以下の図は、2005~2020における、金利が下落時(Failing)と、上昇時(Rising)、および期間全体の年間リターンの差です。左が配当貴族(つまり、配当成長銘柄)、右がダウです。見てのとおり、いずれの期間でも増配銘柄の強さが目立ちます(これは上記でも述べた通りです。)特に、金利下落時のリターンの高さが目立っています。(金利が下落時に株価が上がるのは、みなさんある程度コロナ相場で実感できたのかな、と思います。)
一方で、金利上昇時は、特にハイパーグロース中心に株価の下落が目立っていたかと思います。一方で、増配銘柄の場合、金利上昇時にもその影響は小さく出る可能性があるのです。下記の図は、10年債(金利)利回りと増配株の配当利回りの推移となっています。
見ての通り、増配株の場合、分配金利回りは、金利の影響をほとんど受けません。逆に、金利上昇時(つまり、景気がよい時)は、業績に連動して、分配金も増えていく傾向があります。(一方で業績で株価も上がるので、利回りは変わらない)そのため、金利が下落・上昇のいずれのステージでも、VIGであれば、ある一定の恩恵を受けることができるのではないか、と考えています。
ただの高配当株が除外されている
最後に、高配当株だけど脆弱な株、というのが、除外されている点も大きなポイントです。一般的に、「高配当=連続増配」ではありません。連続増配株というのは、得てして利回りはそこまで大きくないものです。なぜなら、配当の増加に伴い、株価も増加しているからです。
上記で述べたように、VIGは、配当成長より、キャピタルゲイン、つまり株価の成長の方が大きくなっています。株価の成長がなく、配当だけを垂れ流す株が除外されているというのは、ある意味「いいとこどり」ができているのではないかと思います。
VIGは、配当ではなく、その成長力でおすすめのETF
VIGは、配当にフォーカスが当たっているものの、その実は、連続増配できる成長力が強い企業、に投資するETFなのです。
コジコジ夫婦は配当目的の投資には否定的ですが、高いリターンをもたらすのであれば、配当だろうがキャピタルだろうが、それは問題ではないのです。配当に目がくらんで成長力の低い企業に投資することが問題なのです。
VIGは、今後起こりうる、金利上昇局面においても、比較的強い動きを見せるのではないでしょうか。もし、S&P500を買っていて、次に買うETFを検討しているのであれば、実におススメのETFである、と言えるでしょう。